イン・ハー・シューズ

 

友人=ライバル=姉妹

 

In her shoes には、「彼女の靴をはいて」と、「彼女の立場に立って」という2つの意味がある。二人の姉妹の愛を描いたジェニファー・ウェイナーのさわやかなベストセラー小説を、カーティス・ハンソン監督(「L.A.コンフィデンシャル」)が映画化。キャリアはあるが、なんとなく野暮ったい姉・ローズ(トニー・コレット)と、ルックスだけで人生を過ごしてきた妹・マギー(キャメロン・ディアス)、そして、娘の死を背負い続ける祖母・エラ(シャーリー・マックレーン)。そんな3人がそれぞれの痛みと向き合い、激しくぶつかり合いながら絆を深めていく。

 

この映画、お涙ちょうだい型ではないぞ、とわかるのは30分を過ぎたくらいからだろうか。マギーは、実父と継母と一緒に住んでいた家から追い出される破目になり、ローズのアパートに転がり込む。そこで、ローズの靴を盗み、金を盗み、恋人を盗んでいく。ローズは、マギーを追い出し、途方に暮れたマギーは、音信不通だった祖母・エラのもとへ身を寄せることになる。奔放に過ごすマギーに、業を煮やしたエラは、彼女を老人ホームで働かせることにする。そこで出会った元大学教授やエラの友人たちによって、マギーは少しずつ、自分は有能で、人から必要とされ、ひょっとしたら尊敬される人物になれるのかもしれないと感じ始める。そう、自尊心を身につけていく。

 

マギーは、失読症と思われるほど、字を読むのが苦手であった。彼女の話す言葉は、そのほとんどが「捨てぜりふ」のように放り出されていく。「聞きたければどうぞ」という感覚でしゃべっているかのような気にさえなってくる。言葉に、相手を思いやるやさしい心、相手の心の痛みを自分の痛みとして分かち合う心、相手の立場に立って受け入れてあげる心が、微塵も感じられない。

 

他者とのつながりを求めるとき、言葉は重要な役割を果たす。「おはようございます」という挨拶の言葉は相手に対して関心を持っているというメッセージであり、その関心に応じる意味で挨拶を返す。だからこそ、言葉がコミュニケーションの道具となる。一方的な「捨てぜりふ」は、相手に向けたメッセージにはなりえない。その言語感覚をもつマギーは、他者とのつながりを持つことに非常に苦労する。

しかし、マギーは、盲目の元大学教授に詩を読んであげることで、言葉の大切さを身につけていく。人の心は、人に寄り添ってこそ伝わり育まれていく。彼女は、この老人とふれあう中で、心を育て、思いやりを言葉に乗せる術を体得していく。

 

他者への思いやりを持てると、自尊感情も膨れてくる。自己に目を向けるような機会に出会ったとき、自分を肯定できるよりどころを持つことができる。自分の存在意義を自覚し、相手の立場に立った言葉をメッセージとして繰り出すことができるようになる。

映画の最後に、キャメロン・ディアズ(マギー)が読む詩が、とてもいい。

 

I carry your heart.

I carry it in my heart.

あなたの気持ちを、私の気持ちに重ねてみる。

 

そうすることで、私たちは相手の立場に立ったメッセージを送ることができ、人と人とのつながりをつくり上げていくことができる。(G)

 

2005年・米・130分・20世紀フォックス配給

 

 

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