クロニクル

 

頂点捕食者

 

「クロニクル(chronicle)」とは、「ある事象が起こった順番に記録する」という意味だ。シアトル郊外に住む内気で友だちも少ない高校生アンドリューは、アルコール依存症で暴力をふるう父親と病気で寝たきりの母親と暮らしている。ある日、自分の日常を記録に残しておこうとビデオカメラを購入する。
 
最近流行りのヒーローものの映画と一線を画す作品に出合った。私たちが通常では考えられないような力をもったとき、その力をどのように使うべきなのか?力の強いものが、人格者でないときにどんなことが起こるのか?これは正義の味方のスーパーヒーローの話ではなく、たまたま超能力を手にした3人のふつうの高校生の物語である。
 
さえない高校生アンドリューはお調子者のいとこのマットとあるパーティーに参加する。そこで級友のスティーヴと野原に開いた大きな穴を偶然見つけそこに入っていく。穴の中で見つけた不思議な物体に触れた3人は、自分たちが超能力を獲得したことに気付く。それは、いわゆる「念力(テレキネシス)」と呼ばれる、精神力で物体を動かしたり振動させたりする能力で、対象物に直接影響を及ぼし壊すこともできる力だった。

十代にありがちな悪戯心で、自分たちの超能力を使う3人は、その「力」が使えば使うほど強くなっていくことに気付く。それはまるで筋肉を鍛えていくトレーニングのようなものだった。すぐに「キレる」アンドリューは、「力」を使って他人を傷つけるなど危険なことに使い始める。そんな彼をマットはたしなめようとするのだが・・・。
 
新進気鋭だが、まだ名前のさほど売れていない3人の俳優と26歳という若い脚本家(マックス・ランディス)と監督(ジョシュ・トランク)によるこの作品は、その独特な話の筋だけでなく、強く確かな核で見ているものを引き込む力を持っている。現実味のある高校生の日常が私たちの共感を呼び、大笑いするような楽しさと恐怖に身がすくむような瞬間も準備している。
 
心に闇を背負い、次第に孤立するアンドリューが、ひとりぽつんと「頂点捕食者(apex predator)」という言葉を口にする。これは、生態系の中で実質的に自分自身を捕食するものがいない、食物連鎖の頂点に位置する上位種のことを表している言葉だ。「ライオンはシマウマを殺す時に罪の意識を感じるだろうか?いや、感じない」と、自身を頂点捕食者になぞらえて、凶暴な行為を正当化しようとしていくアンドリューは、破壊的な結末へ向かって坂道を転がるように落ちていく。果たして最強捕食者となった彼にストップをかける者は現れるのか?
 
84分という上映時間とは思えないほどギッシリと内容の詰まった中身の濃い作品は、独特な物語の展開の中に手持ちカメラの映像を持ち込み、斬新な切り口で漫画のような超能力の実態を現実的に映し出す。娯楽作品としての荒唐無稽さを楽しむだけでなく、過酷な運命に翻弄されるアンドリューと誰にも言えない「力」を共有するマットとスティーヴの3人の心の絆がどのように結ばれまた解けていくのかをアンドリューのカメラ越しに体感してほしい。(G)

 

2012年・米・84分・20世紀フォックス配給

 

 

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