世界にひとつのプレイブック

 

~自尊感情

 

「そうよ、私はふしだらだったわ。でも、今は違う。いつだって私にはだらしがない所や下品な所があるの。でも、そんな自分が好きよ。私の他のいろんな所もふくめて全部が好きなの。あなたに同じことが言える?あなたは自分のダメなところを許せるの?」ティファニーはパットに問いかける。自分のすべてをさらけ出して精いっぱい生きるティファニーと過去に囚われながら新しい自分を創ろうと必死にもがくパット、二人の物語が全米を魅了した。

 

「世界にひとつのプレイブック」を観に行った。前批評を聞いて、「絶対に逃せない」と思っていた映画だ。“プレイブック”とは、アメフトのチームそれぞれが持っている作戦図のことだそうだ。

 

妻の浮気が原因で心のバランスを崩したパット(ブラッドリー・クーパー)は全てを失くした。家も、仕事も、最愛の妻も。8か月の施設での療養の後、父母の家に住むことになったパットは、自分の人生を一新する決意をする。前向きに生き、妻とよりを戻すことを目標とする。パットの両親の願いは、しかし、彼がもう一度自分の足でしっかりと立つこと、そして地元のアメリカンフットボールチーム=フィラデルフィア・イーグルスの試合を家族で観戦することだった。

 

ティファニー( ジェニファー・ローレンス)は、事故で夫を亡くし、パットと同様心に傷を抱える謎めいた女性で、彼女との出会いがパットの人生の進路を大きく変えていくことになる。ティファニーは自分が立ち直るために、ダンスコンテストに出場することを決めるが、そのパートナーにパットを選ぶ。

ダンスの練習を通して、予期しなかった絆が二人の間に育まれていき、人生の希望の光が見え始める。

 

冒頭に紹介した台詞は、人権教育でよく話題になる。“自尊感情”を端的に表しているのではないかと思って取り上げてみた。ありのままの自分を認めること。自分もまあまあじゃないかと思える感情。自分を大切に思う心。たくさんの欠点を抱える自分だけれど、「あなたがいると楽しくなるよ」などと周りの人から言ってもらえるなど、酸いも甘いもひっくるめて自分を好きだと思える感情のことを“自尊感情”と言うのだそうだ。

 

では、「比較の中での自信」はどうだろう?勉強やスポーツがこれにあたるのだろうけれど、もちろん努力や精進によって勝ち得た充実感・自信は人間の成長にとって欠くことのできないものだ。しかし、人との比較によって思うように結果が出なかった場合を考えてみてほしい。自信を失くし、自分を守るために他人の欠点や失敗を攻撃するようなことにはならないだろうか?

 

短所をふくめてありのままの自分を認めてもらえているという感覚を育てること。この感覚を身につけると、人の非や欠点に対しても寛容でいられるという。そしてその感覚を育てるためには、自分の身近にいる人が自分を温かく包みこんでくれているとか、自分を愛してくれているなど、だれかが自分の気持ちをわかってくれているという環境が必要なのだ。

 

ティファニーとパットの再起を応援しながら、笑いと涙で埋め尽くされるこの作品。自分のベストを尽くせば、必ず希望の光は射してくることを教えてくれる感動作にあなたも共感してほしい。(G)

 

12年・米国・122分・ギャガ配給

 

 

↑Page top