カンフー・パンダ2

 

自分探しの旅

 

「カンフー・パンダ」(2008)はご覧になられただろうか?食い意地だけは誰にも負けないジャイアント・パンダが、なぜか“伝説の龍の戦士”に選ばれ、努力を重ねて自身の秘めたる力を引き出し、悪を打ち倒すまでを描いたアクション=コメディだ。あれから3年、その続編ができた。当然ずんぐりむっくりのパンダのポーが主役だ。ラーメン屋を経営するガチョウの父親に育てられたポーの出生の秘密をひも解いてゆく物語がひとつの大きな流れをつくっている。

 

登場人物であるさまざまな動物たちはもちろんのこと、古代中国を彷彿とさせる情景描写も素晴らしい。今回の悪役、クジャクのシェンは、中国全土の征服を企み、その野望の前に立ちはだかるものを排除しようとする。手下の狼たちを従え、強力な武器を携えてポーの前に現れる。

 

今度のポーはただの能天気な食いしん坊ではない。「自分が誰であるのか」というアイデンティティに悩むちょっと切ない戦士として描かれている。「自分はどこから来たのか?」「一体自分は何者なのか?」というポーの内面からの問いが、そこかしこに散りばめられた笑いとともに物語全編を貫いてゆく。

 

ヒツジの預言者に「いつか白と黒の戦士によって倒される」と告げられたシェンとポーとの出会いが過去の出来事を解き明かす鍵となり、巧みに構成された運命の図式が徐々に浮き彫りにされてくる。

映画の冒頭で、ポーの師匠であるシーフー老師が「内なる平和」を探すようにポーを促すくだりがある。さて、果たしてポーは「自分が何者なのか」を悟り、奥義を獲得するに至るのか。

 

自分探しの旅は、一人で考えてばかりでは目的地には到達できない。若者にとっての自分探しは、いろいろなことに真剣に取り組んでみることだ。勉強に運動に恋愛に討論に、さまざまな体験を重ねることで、だんだんと自分というものが確立されてくる。

 

「勉強ができる」「スポーツが得意」など、分かりやすいよりどころを見つけられる子もいます、と語るのは作家のあさのあつこさんだ。「でも、目立った取りえがないたいていの子は、自分の中に鍬を入れて、必死によりどころを探さないといけない。自分の中で本当にひとつ光っている部分を見つけられる方が、周囲から見えやすい才能に支えられるより、すごいことではないでしょうか」と彼女は語る。

人は誰も長所があり短所がある。「オレはダメなやつだ」と思っても、「いやいやオレにはこんないい所もあるじゃないか」と欠点をひっくるめた自分を好きになり、自分を他人とのかかわりの中で評価してゆくことが、アイデンティティの確立につながってゆくのだと思う。

 

この映画は、題名からもわかるアクション・シーンは言うに及ばず、情緒豊かな登場人物にも彩られ、おっちょこちょいのパンダのポーが間抜けなことをやらかして笑わせてくれ、その笑いの間には純粋で誠実なメッセージが投げかけられる。家族について、友だちについて、寛容と心の安寧について、ちょっとしんみり考えさせられる。「カンフー・パンダ」を観ていなくてもけっこう楽しめて、「カンフー・パンダ3」を期待してしまう作品である。(G)

 

11年・米・91分・パラマウントピクチャーズジャパン配給

 

 

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