おおかみこどもの雨と雪

 

「サマーウォーズ」っていう映画がおもしろいよ。

あるとき、友人がそう教えてくれた。その監督が、新しいアニメーション作品をつくったという。「サマーウォーズ」はまだ観ていなかったが、興味をもって映画館へ出かけた。

 

とてもいい映画だった。感動した。心があたたかくなった。涙が出た。そして、元気をもらった。

 

大学生の女の子が恋に落ち、その男性の子どもを宿す。一人目の女の子は生まれたとき雪が降っていたので「雪」と名付けられた。二人目の男の子は、雨の日に生まれたので「雨」という名前をもらった。母親の名前は「花」(声:宮崎あおい)。そして、父親はオオカミオトコ(声:大沢たかお)だ。

 

名前から察すると自然がいっぱいの中で暮らす家族のようだが、はじまりは都会のアパートでの生活からだ。二人目の男の子が生まれてすぐに父親は不慮の事故で命を落とす。時に狼に変身する「雪」と「雨」を抱えて、「花」は誰にも相談できないまま苦悩しながら子育てをしていく。

しかし、都会では人の目が気になる。アパートの大家からは犬を飼っているだろうと疑いをもたれ(実は狼なんだけど)、児童相談所からは虐待の嫌疑をかけられ、子どもたちを散歩に連れていくのも一苦労だ。

 

それで「花」は、山奥にある自然に囲まれたおんぼろな古民家に移り住むことを決める。自給自足の生活を目指して畑で野菜を育てようとするのだが、何度やってもうまくいかない。そんなとき、村の人たちが困っている「花」に手を差し伸べてくれる。「人目を避けて引っ越してきたはずなのに、いつの間にか里の人たちにお世話になっている」という「花」の台詞が忘れられない。人と人とのつながりの不思議さを感じさせてくれる。

 

「雪」と「雨」、二人のオオカミコドモは、豊かな自然の中で様々な人や獣と出会い、喜び、はしゃぎ、悩み、傷つきながら、大人への階段を昇っていく。

 

キャラクターの表情はシンプルながらみずみずしく、背景はとことん写実的であるがゆえに自然だ。風にそよぐ花、激しく降る雨、流れる川の水、森の木々、どれをとっても美しく真に迫る描写で、登場人物たちの動きを活き活きと見せる。「花」がオオカミオトコと出会ってから、子どもたちが育っていく13年間をていねいに時間の経過とともに追ってゆくこの映画は、回想シーンをはさむこともなく淡々と時間を重ねる。あえて感情に訴えかけるような表現方法を避けているかのよう な展開なのに、何度も心を揺さぶられる。

 

細田守監督は、「どんな生き方でも、社会的に見て幸せじゃないかも知れない人を描いても、ある豊かな側面を表現することができる」と語っているが、まさに、さまざまな困難に立ち向かいながら、懸命に生きようとする「雪」「雨」そして「花」の姿は、私たちに本当の豊かさとは何なのかを教えてくれる。

 

そして、映画の終わりに流れる「おかあさんの唄」という曲がまた素晴らしいんだな。悪いことは言わない。「おおかみこどもの雨と雪」、観ておいて損はないよ。(G)

 

12 年・日本・117分・東宝配給 母は強し おおかみこどもの雨と雪

 

 

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