メアリー&マックス

 

しあわせはいつもじぶんのこころがきめる

 

あなたには欠点があるだろうか?あなたは「しょうがい」とともに生きているだろうか?あなたはいじめられたことがあるだろうか?そして、あなたは人を傷つけたことがあるだろうか?

 

素晴らしい作品に出会った。オーストラリア出身のアダム・エリオット監督が手がけたクレイ・アニメーション「メアリー&マックス」だ。

 

1970年代半ば、携帯もネットもメールもあたりまえではない時代に物語は始まる。8歳のメアリーは、友だちのいない女の子。学校ではいじめられている。自分の趣味に没頭する父親とアルコール依存症の母親と一緒にオーストラリアのメルボルンに住んでいた。ある日、ニューヨークのマンハッタンの電話帳から抜き出した一人の人物に手紙を書く。手紙には自分の好物を同封して。

マックス・ホロウィッツは、ニューヨークに一人で暮らす44歳の男性。肥満と人づきあいに悩みながら孤独な日々を送っていた。ある日、見ず知らずのオーストラリアの少女からチョコレートのはいった手紙を受け取る。チョコレート好きのマックスは、やはりチョコレートを添えて返信する。

そうやって始まった20年にわたる文通は、お互いの誤解などから時々中断しながらも、年齢も性別も大陸も越えた二人の絆を深めていく。

 

アダム・エリオット監督の描く映画の中の登場人物は奇怪な様相を呈し、劇中には下品でわいせつで無慈悲なユーモアがそこかしこに散りばめられている。恋愛、友情、精神疾患などを正面から見すえるこの作品は、十分に成熟した精神を観る側に要求する。「アニメーション」という言葉は「子ども向け」と同義で使われることも多いが、「メアリー&マックス」に限ってはそうとは言えない。これは、人生の喜びと悲しみを知る大人向けの映画である。

 

そして、この作品に出てくる登場人物は、みな心や体に傷を負っている人ばかりだ。万引きをやめられない主婦。役者志望で吃音症の男の子。おでこにあざのある女の子。広場恐怖症で車いすに乗る男性。極度に視力の悪い老女などなど・・・。自分の欠点を克服しようとする人もいれば、自分の特徴としてその欠点とともに生きていこうとする人もいる。

「しょうがい」や病気や恵まれない境遇といったものは、客観的にみれば確かに不幸なことなのかもしれない。そのことが原因で気おくれすることもあるだろう。しかし、それを「かわいそう」とか「大変だ」とか他人が勝手にその人を不幸だと決めつけるのはまちがいである。大事なのは本人が自分の置かれている状況をどう感じているかだ。相田みつをさんの有名な言葉のとおり、自分の幸せ・不幸せは「いつもじぶんのこころがきめる」のだから。

 

主だったシーンの撮影に57週を費やし、133のセットに212体の人形と475個の小道具を用いたこの作品は、その繊細で情緒豊かなキャラクターが人と人との絆を見事なまでに描き出す傑作である。メアリーとマックスの悲喜こもごもの人生と二人が育むかけがえのない友情に引き込まれながら、クライマックスは怒涛の感動が押し寄せてくる。私は最後の10分間涙が止まらなかった。ぜひ、あなたにも観てほしい。(G)

 

 

08 年・豪・92分・エスパース・サロウ配給

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