パコと魔法の絵本

 

協力=強力

 

鮮やかな画面に、一風変わった登場人物たち、ちょっと影のある、しかし感動的な内容も盛り込まれた映画に出会った。最初は、子ども向けの作品じゃないかと思って、あまり興味の無かったこの「パコと魔法の絵本」という物語は、実は笑いと同時に暗い側面があって、ぜひ大人に鑑賞してほしい作品なのである。

舞台劇をもとに作られたこの映画は、中島哲也監督(「嫌われ松子の一生」「告白」)がCG(コンピュータ・グラフィック)をふんだんに取り入れて造りだした心温まる物語。

 

大会社のトップであった大貫(役所広司)は心臓の病で現在治療中である。「お前が私を知ってるってだけで腹が立つ」が口癖の気難しく、傍若無人な大貫は、病院中から嫌われていた。しかし、彼のとげとげしい装いは、パコ(アヤカ・ウィルソン)という笑顔を絶やさない女の子によって徐々に緩められていく。パコは、両親を事故で亡くし、その事故の後遺症で記憶を一日しか保つことができなくなっていた。大貫は、毎日パコに同じ本を読んでやることによって、その話に出てくるガマ王子にわがままな自分を投影させていくのだった。

他の登場人物もみな強烈な個性を持っている。悪魔のような看護師たち(土屋アンナ、小池栄子)やメルヘン志向の医者(上川隆也)をはじめ、消防車に轢かれた消防士(劇団ひとり)、ジュディ・オングの好きな女装男性(國村準)に天才子役であった自分の殻から抜け出せない俳優(妻夫木聡)など、それぞれが弱さと劣等感を抱えながら共同生活を送っていた。ある日、大貫は毎日パコに読んであげる「ガマ王子対ザリガニ魔人」という本を病院のみんなで舞台劇にしようと思いつく。

「自分以外の人間はクズだ」と思っていた大貫が、「協力してください」「助けてください」「手伝ってください」と呼びかける。人間はそもそも小さな弱い存在だ。一人の力には限界がある。しかし、「協力」すれば「強力」な力となる。自分は弱い存在だと知り、謙虚になることで人は「協力」し、大きな力を得ることができる。強者の論理を振りかざしていた大貫は、パコの笑顔と絵本によって自分の弱さと傲慢さに気づいたのだ。

クライマックスは、病院中が協力して創りあげるお芝居だ。舞台はステージの上だけにとどまらない。病院全体を使って、所狭しと繰り広げられる演技にパコはついて回る。CGによる視覚効果に魅了され、実写との連係もスムーズだ。そこかしこにユーモアが配され、目まぐるしくお話はすすんでいく。

 

人間は一人では生きてゆけない。そこへいくと二人ならデュエットできる。三人寄れば文殊の知恵が出る。大貫は、病院のみんなの力を借りてパコのために劇を行った。ガマ王子は、池のみんなの力を集めてザリガニ魔人と戦った。ひとりひとり弱い人間が、それぞれに相手のことを考え、みんなで同じ目的に向かって力を合わせることが本当の強さなんだというメッセージをパコの無垢な笑顔とともに楽しんでもらいたい。(G)

 

08年・日本・105分・アミューズソフトエンタテインメント

 

 

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