アバター

 

~多様性は力~

 

話題騒然の「アバター」を観た。「タイタニック(1997)」や「ターミネーター(1984)」などを手がけ、ひとつの映画を芸術にまで高め、社会現象まで巻き起こしてきたジェームズ・キャメロンという監督が、10年以上温めてきた物語を4年以上かけて制作したと言われる作品だ。

舞台は二一五四年の宇宙空間。鉱物資源豊かな星の支配を目指す人類と、その星に住む先住民の戦いと恋を描いた壮大な冒険物語が繰り広げられる。

 

脚の不自由な海兵隊員ジェイクは、パンドラという星に眠るアンオブテイニアムという希少鉱物を手に入れようとする活動に参加する。その星の先住民ナヴィを懐柔するアバター・プログラムの一員として選ばれたのだ。神経を投影させることによってナヴィの体を遠隔操作し、人間が入り込むことのできない先住民の世界に身を置きながら、彼らとの信頼関係を作り上げようと試みる。ジェイクはナヴィの体を操り、部族の長の娘ネイティリと仲良くなっていく。

 

ナヴィはまばゆいばかりの青い肌をした身長3メートルもあろうかという巨人で、尻尾と大きな金色の目、幅広な鼻を持つ。最初に見たときは、違和感があり、醜いとさえ感じたが、映画の半分を過ぎる頃には、その印象が嘘のように思えてきた。ネイティリがとても魅力ある女性に見えてきて、恋に落ちていくジェイクの気持ちを追体験しているかのようだった。

 

ジェイクは、次第にパンドラの生命を脅かす計画に疑問を抱くようになる。そして、純粋な先住民のために、武力によって解決を図ろうとする人類と戦う決意をするにいたる。美しい自然と共生しようとするナヴィと物欲に駆られ圧倒的な軍事力で自然破壊を厭わない人間との戦いが始まる。

 

ナヴィは自然の中に神が宿るという信仰を持ち、多様な自然のあり方を大切にしている。折りしも二〇一〇年は国連が定める「国際生物多様性年」である。「生物多様性」とは、“いろいろな生きものが存在している”ということ。私たち人間もその一部で、多様な生き物のつながりがもたらす恵みに支えられている。しかし、パンドラの自然を破壊する人間と同様、この地球においても人間のさまざまな活動によって、多くの生物が絶滅の危機にさらされ、この“多様性”が危機に瀕している。人間の活動によって、生き物たちの多様性を損なうことは避けていかなければならない。「お互い地球の中で共存する」という感覚を持つことを大事にしたい。

 

生物だけではない。“多様性”は大きな力となる。言語、文化、国籍、人種、性別、年齢など、少数を大切にしながら、一人ひとりの能力・個性をうまく活かし、共に生きる仲間として暮らしていきたい。すべての人が疎外されることなく、さまざまな活動に参加できる状況を作っていかねばならない。それが、社会の結束を強め、活力を高め、平和をもたらしてくれるのだと思う。

 

パンドラという星の自然風景の美しさに、思わずうっとりするほどの映像が全編を通して楽しめるこの「アバター」という映画。歴史に残る作品となるであろう。(G)

 

09年・米国・162分・20世紀フォックス映画配給

 

 

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