ヒーロー/靴をなくした天使

 

偽者を見抜く眼

 

今回紹介する映画は、「ヒーロー/靴をなくした天使」という作品。「ヒーロー」と言っても、あの木村拓哉主演のテレビドラマではない。スティーブン・フリアーズ監督がメガホンを執り、ダスティン・ホフマン、ジーナ・ディヴィス、アンディ・ガルシアという三大スターを配した1992年制作のアメリカ映画だ。

 

主人公のバーニー・ラプラント(ダスティン・ホフマン)は、さえない詐欺師。離婚しているが、一人の男の子の父親である。ある嵐の夜、車を運転していた彼の目の前に旅客機が墜落する。ちょうど息子と同じくらいの子どもに懇願されて、彼は燃え上がる飛行機の中へ入り込み乗客を救出したのだった。その助けられた乗客の中に、TVレポーターのゲイル(ジーナ・ディヴィス)も含まれていた。警察と消防隊が到着したときには、バーニーは仕事を終えその場を立ち去っていた。自分の名を告げることもなく、片方の靴を残したまま。

事故から救出されたゲイルは、「104便の天使」を見つけようとテレビを通じて大々的なキャンペーンを打つ。ヒーローには100万ドルの報奨金まで出すことにした。しかし、名乗り出てきたのはバーニーではなかった。バーニーから残りの片方の靴を譲り受けたジョン・ババーというホームレスが大金欲しさに「自分がやった」と靴とともに現れたのだ。

 

皮肉なことに、ヒーローになりすましたジョンは本物の英雄になっていく。ひげを剃り、ピカピカの服を身にまとったジョンは、ヒーローのように見えるだけでなく、ヒーローのように振舞っていく。謙虚で、美男子で、人に好印象を与えるジョンは、何千年も人々が待ち焦がれた救世主のようでもあった。

 

しかし、清らかな心のジョンは徐々に「自分は嘘をついている」「やってもいないことでみんなに祭り上げられている」ことに罪悪感を持ち始める。

だらしなくてダメ男のバーニーが実は本物のヒーローで、清廉潔白なイメージのジョンが実は偽者であるという二人の対比がおもしろい。そして、マスコミによって作りあげられるジョンという英雄に大衆が熱狂していく様を見せられる。

 

メディアは私たちに社会の出来事を教えてくれ、さまざまな娯楽を提供してくれる。しかし、時に中立性や正確性に欠け、過剰に報道したり、あるいはまったく報道しなかったりすることがある。また時には事実の正確性より視聴率を重んじるため間違ったことを私たちに伝えることもあり、国家と結びつくと国民を扇動し戦争にまで発展する場合もある。テレビやラジオは常に私たちに真実を伝えているわけではないことを、私たち情報を受け取る側も十分注意する必要があるのではないか。過激な報道に踊らされて、弱い個人の人権を蔑ろにするような風潮には厳然と立ち向かっていきたい。

 

ダスティン・ホフマンの巧さとアンディ・ガルシアの好演が光り、ジーナ・ディヴィスが花を添えるこの風刺喜劇。2時間があっという間に過ぎる傑作である。そして、痛快なラスト・シーンにあなたの顔がほころぶことを保証します。(G)

 

92年・米・117分・ソニーピクチャーズエンタテイメント配給

 

 

↑Page top