ラースと、その彼女

 

心温まる奇跡

 

「いったいどんな映画なんだろう?」と興味が湧いた。インターネットで注文した等身大のリアルドールを使って、どうやって人生を肯定する希望に満ちた映画を作れるのだろうか?「ラースと、その彼女」がその答えを出してくれる。

 

ラース(ライアン・ゴズリング)は、心優しいが痛々しいまでに恥ずかしがり屋な青年。他人に触れられるのが大の苦手の彼は、女の子に対しても極端に内気。仕事も持ち、社会生活にはなんとか適応しているが、帰宅すると離れの別棟に閉じこもる。母屋には兄のガスと妊娠中の義姉カリンが住むが、ラースを心配するカリンは毎朝毎晩食事を伴にするように彼を招待するのが日課となっていた。しかし、ラースは次から次にありきたりの言い訳をしながら彼女の申し出を断り続ける。そして、離れの暗がりにひとり座り続ける。

ある日、兄夫婦はラースに「彼女を紹介するよ」と言われ、大喜びする。しかし、その相手はインターネットで注文した等身大のリアルドール(!)だった。彼女の名前はビアンカ。ラースによれば、下半身が不随の宣教師だそうな。彼は彼女を車椅子に乗せてあらゆる場所へ連れて行く。もちろん誰もがその彼女の登場にビックリ仰天する。

ガスは恐れおののく。カリンの方が受容的だ。彼らはラースとビアンカをダグマー医師の所へ連れて行く。医者の助言は、「ラースの幻想に話を合わせて」というものだった。ダグマー医師は、定期的にビアンカを「治療」し、ラースの話を聞きながら彼の心を徐々に解かしていこうとする。

奇跡は、兄夫婦をはじめラースを取り巻く人たちがビアンカに礼を尽くして接するようになっていくことだ。人一倍優しく純粋な心を持つラースをみんなが支えようと試みる。二人の不思議な関係を温かく包み込んでいく。そこから見えてくるのは、人を真っ直ぐに愛すること、人に優しく接することという、よりよい人生を生きるためのメッセージだ。

でも、なぜラースは人形に恋をしたのだろう?その謎は物語の進行と共に徐々に解き明かされていく。心の病にどう対処すべきか?人とどうつき合えばいいのか?人を理解することとは?様々なことを考えさせられる。

 

人は自分が傷つくことによって、他人を理解する力がついてくるのかもしれない。深く傷ついた経験は、相手の言動を理解する一番大きな助けになるのではなかろうか。他人の痛みをあたかも自分のことのようにとらえ親身になれる人は、心に傷を負った本当に優しい心の持ち主なのだ。

「あなたが悲しいのが/わたしにもわかるのは/いつかのわたしが/あなただったときがあるから/たくさんのいつかを背負って/今わたしもあなたも/ここにいるね」(さくらももこ)
誠実さという言葉ではなかなか表しにくい人間性と、本当に愛する人に見せる思いやりをテーマに、素晴らしい俳優たちの演技が創り出すこの作品。文句なしに一押しです。(G)

 

07年・米・106分・ショウゲート配給

 

 

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