大いなる陰謀

 

何のために立ち上がるのか?

 

「私がしなくても、だれか他の人がたぶんどうにかしてくれる」関心がないわけじゃないけれど、行動は起こさない。そんな人が増えているという。

七年ぶりの監督作でロバート・レッドフォードは、無関心でいることの罪悪と自分の頭で考えることの大切さを強く訴える。3つの場所で展開する別々の話を一つの物語に撚り合わせていく。

 

3つの場面は、それぞれ場所は異なるがほぼ同時進行で話がすすんでいく。ワシントンDCでは、敏腕ジャーナリストのジェイニー・ロス(メリル・ストリープ)が野心高き政治家ジャスパー・アーヴィング( トム・クルーズ) の独占インタヴューを行っていた。内容は、今まさにアフガニスタンで進行中の対テロ戦争の新作戦についてだった。

その作戦に関与していたのは、二人の聡明な兵士、スペイン系アメリカ人のアーネスト・ロドリゲス( マイケル・ペーニャ)とアフリカ系アメリカ人アリアン・フィンチ(デレク・ルーク)。2つ目の場面は、二人が作戦の失敗により敵に囲まれてしまう吹雪の夜のアフガニスタンの山頂。ひとりは負傷がひどく、もうひとりも脚を雪にとられ動けない状態だった。

二人はカリフォルニアの大学で政治科学を教えるスティーヴン・マリー( ロバート・レッドフォード)のお気に入りの学生だった。3つ目の糸は、マリー教授が類まれなる才能を持った学生トッド・ヘイズ(アンドリュー・ガーフィールド) と早朝に行う面接である。トッドは大学の講義に欠席がちになっていた。

3本の糸は縫い合わされる中で一つのメッセージを映し出す。それは「かかわる」ということ。私たちが社会の中で暮らすひとりの市民として負うべき責任について考えさせられる。

 

この映画の邦題は「大いなる陰謀」であるが、原題はLions for Lambs。このタイトルの意味は、映画の中でこう説明される。

「第一次世界大戦でドイツ軍将校が勇敢で高潔なイギリス兵を賞賛したという。そして、何千人、何万人もの英国軍の歩兵の命を無駄にした上官らを同じくらい嘲笑したともいわれる。イギリス兵はまるでライオンのように戦ったが、その上に立つ司令官たちが羊のように臆病だった。司令官は考えずに好きなように兵士たちを犠牲にした。無能な羊を守るために有能なライオンが犠牲になった。」

本気で家族と国家を守るために自分たちの命を犠牲にしている人たちがいるのに、無神経な私たちはそれを「当たり前」ととらえている。

メディアと教育は世の中を変える大きな力を持っている。この二つの共通の使命は突き詰めれば「平和と人権」を守ることではないだろうか。権力が暴走しないよう監視し、国家が個人を踏み潰そうとするのを「人権」を盾にはね返すのがメディアと教育の本来の役割である。ロバート・レッドフォードは、資本にからめとられ自分の意志を奪われたメディアと、自分だけ良い思いをすればいいと考える学生を育てる教育に、「批評家で終わるな。次へ進め。行動を起こして現状を打破しよう」というメッセージを突きつける。

今までにない役柄に挑戦したトム・クルーズと名優メリル・ストリープそして監督も兼ねたロバート・レッドフォード。3人の大物スターが織り成す濃密な対話劇には多くのことを考えさせられる。ぜひ多くの人に観てもらいたい硬派な社会派ドラマである。

 

07・米・92分・20世紀フォックス映画配給

 

 

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