河童のクゥと夏休み

 

人間の友だちができちまった

 

2007年に世界遺産に登録された島根県大田市の石見銀山で、増える観光客と自然環境の調和が問題になっている。2008年4月に一般公開を始めた坑道は、コウモリの冬眠場所としても知られる。しかし、準絶滅危惧種のユビナガコウモリは約2500匹いたにもかかわらず、今年1月中旬にはわずか約250匹に激減していた。一般公開に向けた視察がコウモリの冬眠に影響した可能性もあると指摘されている。

森を切り開いたり、海を埋め立てたり、川にダムを作るなど私たち人間の活動が原因でたくさんの生き物が棲みかを奪われ、これまでにない速さで絶滅している。生き物を絶滅させないためには、どんな生き物がどのような理由で絶滅してしまったのか、どうして絶滅しそうなのかをよく知る必要がある。

今回紹介する映画は、自然動物の暗喩でもある河童から自然を奪い、絶滅の危機に追いやった人間の罪深さに胸を締め付けられる作品である。

 

夏休み前のある日、小学生の上原康一は学校からの帰り道に大きな石を拾う。持ち帰って水で洗うと中から何と河童の子どもが!!康一はこの河童を「クゥ」と名づける。クゥは康一たちと同じ言葉を話し、何百年もの間地中に閉じ込められていたことがわかる。最初は驚いた家族もクゥを受け入れ、クゥのことは秘密にしようと決める。

しかし、どこからかクゥの存在が漏れ、雑誌記者から無理矢理写真を撮られてしまう。マスコミが押しかけ、テレビ出演の依頼が殺到する中、家族とともにテレビに出ることになったクゥだが・・・

 

以前このコーナーで紹介した「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲(2001)」の脚本・監督を担当し、子どもだけでなく大人からも賛辞を集めた原恵一さん。彼が、原作の絵本に出会ってから20年も企画を温め、制作に5年をかけた渾身の作品がこの「河童のクゥと夏休み」である。

「ウソをつくのは人間だけだ」というクゥ。その言葉からもわかるように、クゥは愛情深く、やさしく、我慢強く、勇気があり、澄んだ心を持っている。そのクゥの純粋さが人間の醜さ・愚かさを浮き彫りにしていく。

人間の好奇の目にさらされ逃げ出したクゥが東京タワーの上から見える世界に、「ここは人間の巣だ」と言った言葉に切ないやるせなさを感じずにはいられない。

「人寄せパンダ」という言葉がある。珍しいものに対する人間の好奇心を金もうけと権力に利用しようとする人がいることは確かだ。しかし、この悲しく汚れた人間の性は、私たちの良識と品格で乗り越えられるものではないだろうか。私たちの尊厳を狡猾に搾り取ろうとする甘い誘惑に対してよく観察し注意深く拒むことがよりよい社会を作っていくために求められることなのだ。

そして、私たちは、知らないうちに、世界の生物環境に大きな負荷を与えている。食物、薬品、木材、その他の品物を購入するとき、環境への負荷の小さな製品を選び取る努力が必要である。数十億年かけて地球上に作り出された生命や生態系、それ自体が内包する価値が損なわれることなく受け継がれていく責務を人類は負っているのだ。

愛おしい河童のクゥと康一の友情を描いたこのアニメーション作品は、ぜひ子どもと一緒に観てもらいたい。ほろ苦くも爽やかな夏の風が全編を通して吹きぬける感動作である。(G)

 

07年・日本・138分・松竹配給

 

 

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