ニュースの天才

 

うそ

 

嘘とは、事実に反する事柄の表明であり、過失や無知ではなく、故意になされたものを言う。嘘は他人を欺くために用いられる。

 

今回紹介する映画は、20代で権威ある政治雑誌「ザ・ニュー・リパブリック」の記者として華々しい業績を残した実在のジャーナリスト、スティーヴン・グラスの栄光と転落を描いたドラマだ。

彼が3年間に書いた41の記事のうち27もの記事が部分的にあるいはまるごと作り話であった。名声への近道を探し、グラスは情報やインタヴューを、時には事件そのものを捏造した。しかし、彼のついた嘘は気づかれることなく通り過ぎてゆく。

ヘイデン・クリステンセンという童顔の役者によって演じられるグラスは24歳。病的なまでに周囲の人から「気に入られ」ようとする。謙虚で決して出しゃばらず、同僚のささいなことまで気にかけ、みんなから慕われていた。ごまをすったり愛想良すぎたりするわけでなく、ただ人を喜ばせたいように見えるだけの若者は、少しでもトラブルの兆候があるとよくこう尋ねた「僕のこと、怒ってる?」。

この映画の中では、誠実で善良な人が悪人のように見え、本当は他人を欺こうとしている卑劣な輩が善人のように映し出される。グラスの最初の編集長だった父性愛あふれるケリーは解雇され、グラスの同僚であったチャックが後任となる。ユーモアに欠け、グラスの成功を妬んでいるかのようなチャックに記者たちの信頼はなく、偉大なケリーの不在を嘆くものはいても、チャックの信奉者は現れなかった。だから、チャックがグラスの記事の信憑性に疑問を持ち問い詰めても、周囲の同僚は冷ややかな態度で見ているだけだった。朴訥な実直さが器用な如才なさにからめとられていく様を見せられる。

しかし、やはり必ず正義は勝つのだ。結び目を解いてゆく中で出てくる矛盾を、グラスはまた別の嘘で覆い隠そうとする。そうすることが自分を追い詰めていくことだと気づかないまま・・・

 

嘘のない一日を送りたい。そして、そういう一日一日を積み上げた一生にしたい。嘘のない人生を送ることは、たやすくできることではない。とても難しいことだろう。しかし、いつでも真実と向き合う厳しさを持った人は、不合理な差別を「おかしい」ととらえることのできる人だと思う。そして、そういう人は、差別を助長するような言動にはっきり「ノー」と言える強い姿勢を貫ける人、自分の利益のために他人を蔑ろにしてはならないという固い決意を持った人だと思うのだ。

 

原作/監督のビリー・レイは、「ひどいヤツがいたもんだ」と言いたいのではない。ジャーナリストの事件を描く中で、人間の名誉欲や欲に負けてしまう弱さを浮き彫りにしたかったのだ。誠実に責任を果たすということの大切さと難しさを思い知らされる。(G)

 

03年・アメリカ=カナダ・94分・ギャガ=ヒューマックス配給

 

 

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