リトル・ミス・サンシャイン

 

無条件の愛

 

一番良く作られる映画のジャンルは家族物語かもしれない。だれもが関係のある題材で、家族の抱える問題が笑いあり涙ありの2時間の中で解決されるのを見るのは楽しいものだ。ひとつの家族が変わり、みんなで力を合わせ、あるいはお互いに学び合う。そんなエンターテイメントを上質の演技を通して味わうことが出来たら・・・

 

そこで、「リトル・ミス・サンシャイン」だ。バナナ色のポンコツバスに詰め込まれた決して幸福とはいえないひとつの家族が、アメリカ南西部の町からアメリカン・ドリームを象徴する目的地めざして旅をする。思わず応援したくなるメガネのかわいい娘を囲む俳優陣は演技派をそろえ、それぞれが強烈な個性でぶつかり合う。卓越した台詞まわしに知らぬ間に物語に引き込まれていく。

7歳の少女オリーブはビューティー・クィーンをめざして日夜努力を続けていた。そんな彼女に朗報が舞い込む。カリフォルニアで行われる“リトル・ミス・サンシャイン・コンテスト“に繰り上げ参加が認められたのだ。ふだんは自分のことしか考えない家族のメンバーがオリーブの目的達成を最優先させる中で家族の絆を取り戻していく。

失恋で自殺未遂を起こし、フーヴァー家に引き取られることになったオリーブの叔父。家族と口をきこうとしない10代のオリーブの兄。本の出版で一攫千金を夢見る父。麻薬中毒で毒舌の祖父。そして、そんなバラバラな家族をなんとかつなぎとめようと奮戦する母。一人ひとりが欠点と弱さを抱え、順番にスポットライトが当たっていく。映画全体を通して、それぞれの感情的な問題を、気取ることなく、大げさに扱うことなく、絶妙なバランスを保ちながら描き出す。

 

「あなたはあなたのままで、そのままでいいんだよ。私はどんなことがあろうとも、あなたの味方だよ」というメッセージがオリーブに送られる。親は子どもに無条件の愛を与える。しかし、無条件の愛は親から子どもへの一方通行だろうか。

もちろん、そんなことはない。いや、それどころか子どもの方が無条件に愛をくれているのではないだろうか。子どもは、父に母に無条件に微笑んでくれる。「もう少し、料理が上手になったら好きになってあげるよ」とか「もう少し、いっしょに遊んでくれたら好きになってあげる」なんて決して言わない。

「もう少し運動ができれば・・・」とか「もう少し勉強ができれば・・・」とか親の方が子どもに条件をつけているようにも思える。私たちは、子どもに感謝し、子どもから学ぶことがたくさんあるのではないだろうか。

 

条件付の6人がバスに乗り込み、みんながひとつの目的に向かって無条件に走り始める。「リトル・ミス・サンシャイン」は、お決まりのパターンで話がすすまないから楽しめる。家族一人ひとりが誠実に向き合っているから面白い。そして、賢い愛情を持った人間であることを描くから感動できる喜劇になっているのだ。(G)

 

06年・米・101分・20世紀フォックス映画配給

 

 

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