不都合な真実

 

地球温暖化に挑む米元副大統領

 

地球がおかしい。

二〇〇七年の2月はとてもあたたかく、「やっぱり変だよな、最近の気候・・・」と誰もが感じていたのではないだろうか。

二酸化炭素などの温室効果ガスが増えることで地球の気温が上がる「地球温暖化現象」。キリマンジャロの雪は解け、北極の氷は薄くなり、各地にハリケーンや台風などの災害がもたらされる。年々上がり続ける気温のせいで、地球体系が激変し、植物や動物たちは絶滅の危機にさらされる・・・。

“不都合な真実”とは、地球温暖化問題のこと。京都議定書の受け入れを拒否しているアメリカの一部政治家にとっては確かに“不都合な”問題を提起するのは、アメリカの元副大統領、アル・ゴア。温暖化によって引き起こされる数々の問題に心を痛めた彼は、人々の意識改革に乗り出す。環境問題に関するスライド講演を世界中で開催し、地球と人類の危機を訴えてきた。

その講演を中心に構成されたのがこのドキュメンタリー映画。豊富なデータを使い、視覚に訴え、ユーモラスな語り口で、温暖化問題をわかりやすく、説得力をもって伝えてくる。現代人にとって耳の痛い問題を正面から描き、観る人に衝撃を与える作品となった。全米有力紙がこぞって絶賛し、社会的な反響を呼んだこの作品が、二〇〇七年・第79回アカデミー賞ドキュメンタリー賞を受賞したことは記憶に新しい。

講演の様子を軸にすえた内容に、「よくできた教育映画」という感想を持つ人もいるだろう。さすが政治家と思わせる話術とさまざまな科学的データや図表を駆使したプレゼンは、それだけで一級のエンターテイメントになっている。

「30年以上この問題を訴え続けてきたが、ホワイトハウスを去った後、ある結論に達した。やはり政治システムを変えるには、個人単位、家族単位、地域単位で人々に直接語りかけていくしかない、と。アメリカや世界を変えるには、世論を動かさなくてはと思ったんです」とゴアは言う。講演場面の間にはさまれる独白や個人的体験を描いたシーンから彼の情熱や使命感、人としての優しさが伝わってくる。

一九九七年地球温暖化問題に取り組む指針となる京都議定書が採択された。しかし、アメリカは未だにこの議定書を批准していない。石油業界との結びつきが強いとされるブッシュ政権は、「CO2と温暖化の関係は不明」という立場をとっている。

多くの政治家が耳を貸そうとしない“不都合な真実”。しかし、私たちが日々の暮らしの中で小さな努力を重ねることで、地球を変えていける、とゴアは訴える。省エネ家電製品を使う、公共の交通機関を使う、自動車の燃費基準を上げる、再生エネルギーを使うなど、環境にやさしい生活を続けることで事態は確実に改善されていくと示す。次世代の子どもたちに私たちのたったひとつの故郷を壊さないで渡したいと立ち上がった男。彼の勇気と希望に満ちた闘いをあたたかい視点で描く異色作。京都議定書ホスト国の一員として観ておくべき映画です。

 

06年・米・100分・UIP映画配給

 

 

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