アイ・アム・サム

 

愛こそすべて

 

知的しょうがいのため7歳の知能しか持っていないサム・ドーソン(ショーン・ペン)は、スター・バックスで働き、ビートルズの熱狂的なファンである。彼はホームレスの女性との間に娘をもうけたが、母親は出産後すぐに彼らを置いて去ってしまう。娘を大好きなビートルズの歌にちなんでルーシー・ダイアモンド(ダコタ・ファニング)と名づけ、外出恐怖症の隣人アニーやしょうがい者仲間たちの助けを借りながら育てていくサム。

 

しかし、娘が7歳になるとサムの知的しょうがいが、ルーシーの通う学校で問題になり始める。彼女は、わざと父親より賢くないように振る舞いだし、学びから逃避しようとする。児童福祉局は娘を父親から引き離そうとする。

 

ルーシーと離れ離れになりたくないサムはエリート弁護士リタ・ハリソン(ミッシェル・ファイファー)に訴訟を頼む。裁判が進む中、サムはリタに「愛こそすべて」だと身をもって教えていく。

 

この作品では、サムのビートルズの曲に対する強い思い入れと歌詞から学び取った人生訓や気持ちのあり方というものを素直に信じる心が物語の大きな柱になっている。サムの心の糧の一つになり、生き方にも影響を与えたビートルズ。映画の要所でふんだんに彼らの音楽が使われ、知的障害のあるサムが言葉でうまく表現できない部分を代弁しているかのようだ。

ルーシーがしょうがいを持った父親を「物足りないと感じたことがあるだろう」と問われ、「愛こそすべて(All you need is love.)」とビートルズの曲名で答える場面もあり、ビートルズ抜きに、この映画は語れない。

 

ところで、日本には「知的障害者福祉法」という法律があるのをご存知だろうか。この法律は、知的しょうがい者の自立と社会経済活動への参加をすすめることを目的とするものだ。そして、「すべての知的障害者は、社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする」と謳われている。

サムのようなケースで、スター・バックスやピザハットで働く光景は、日本ではまず見ることができない。アメリカでは、ショッピング・センターであたりまえのようにしょうがい者の方がレジで仕事をしていたり、デパートなどに行くと、電動車椅子に乗った案内係の方などもよく見かけたりする。

 

この作品は硬派な社会派ドラマでもなく、しょうがい者が奇跡を起こすファンタジーでもない。本作を魅力的にしているのは、まっすぐな普通の親子愛を描いたことである。親だから子どもを愛している。そして、誰にもその愛を邪魔して欲しくない。そんな単純なメッセージを伝えようとする映画だからこそ感動を呼ぶのかもしれない。

 

親の無責任さが大きな社会問題になっている現代にあって、父親サムの娘を想う愛情は、私たちの心に強く警鐘を鳴らす。考えてみれば、愛情に、知能の高さ低さなどは全く無関係なわけで、親子にしても、夫婦にしても、恋人同士にしても、最後に私たちがよりどころにするのはやはり愛情なのだ。

 

01年・米・132分・松竹=アスミックエース配給

 

 

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