ニュー・シネマ・パラダイス

 

はたらく

 

戦後間もないシチリアの小さな村の映画館をめぐる人々の映画への愛を描く。89年カンヌ映画祭審査員特別大賞を受賞した作品である。物語は、大きく3つに分けられる。主人公の幼いサルバトーレ(みなからトトと呼ばれている)と映写技師アルフレードとの交流を描く少年時代。成長したサルバトーレと初恋の少女エレナとの大恋愛を描く青年時代。そして、映画監督として成功を収めたサルバトーレの帰郷を描く壮年時代。1本の映画としては、かなり長いものであるが、鮮明な映像美が観るものを飽きさせない。

 

少年トト(サルバトーレ)は親の目を盗んで映画館に通いつめていた。彼を魅了したのはフィルムの宝庫である映写室と、それを操る映写技師のアルフレードだった。

「僕にも教えてよ」というトト少年に、アルフレードは、「教えたくないんだ。お前にはさせたくない。つらい仕事だ。いつも一人ぼっちだ。仕方なく同じ映画を100回も観る。グレダ・ガルボやタイロン・パワーに話しかける。クリスマスにも働く。休みは聖金曜日だけだ。ここは、夏は死ぬほど暑い。冬は寒くて凍えてしまう。煙とガスを吸うが稼ぎは少ない」と仕事の苦労話をする。

「なぜ他の仕事をしないの?」と聞き返すトトに、「ばかな男だからさ。運もなかった。でも、もう慣れたよ。それに客席が満員になって観客が楽しんでいると自分も楽しくなる。人が笑うのが楽しい。自分が笑わせている気がする。お客の悩みや苦労を忘れさせる。それが好きだ。」と答えるのである。

 

自分の仕事に対して「自分も楽しくなる」「それが好きだ」という言葉が表すのは、自分は存在理由を持ったかけがえのない人間であるということだ。自分の仕事に情熱を傾け、自主的・自発的に取り組み「自分だからできる」という気持ちが、自己肯定感をさらに強め、仕事に「生きがい」を感じることができる。

人は、人とつながることで、自分の存在を確認し、生きる勇気も与えられるのであろう。

 

映画の黄金時代を彩ったさまざまな名画とともに物語は微笑ましく進む。トト少年の愛くるしい笑顔と言ったらたまらない。映画を上映している教会・パラダイス座とそこに出入りする人々の貧しくも笑いのある日常に古き良き時代のノスタルジーをかきたてられる。

火事で失明したアルフレードのあとを継いで映画館の灯をともし続けたのがサルバトーレであった。サルバトーレはエレナという少女に恋をする。焦がれるほどの想いにエレナの気持ちも彼の方に傾くが、彼女の両親はふたりの交際に反対する。さて、サルバトーレの初恋はどうなっていくのだろう?

そして、アルフレードがサルバトーレに遺した形見がまた泣かせるんだなあ。

素直に名作だといえる作品である。是非一度ご鑑賞あれ。(G)

 

89年・伊・仏・175分(オリジナル版)・日本ヘラルド映画

 

 

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