モンスターズ・インク

 

穢れ

 

穢れ(けがれ)とは、仏教、神道における観念の一つで、清浄ではない、汚れて悪しき状態のことである。汚れ(けがれ)とも書くが、物理的な汚れ(よごれ)というよりはむしろ精神的・観念的な汚れのことである。穢れが身体につくと、個人だけでなくその人が属する共同体の秩序を乱し、災いをもたらすと考えられた。穢れは普通に生活しているだけでも蓄積されていくが、死・疫病・出産・月経、また犯罪によって身体につくとされ、穢れた状態の人は祭事に携わることや、共同体への参加が禁じられた。穢れは禊(みそぎ)や祓(はらえ)によって浄化できるそうだ。バカバカしい。

 

ウィットに富んだ「モンスターズ・インク」は、そんな偏執的な考えを笑い飛ばす映画だ。モンスターたちの奮闘は、そこかしこにジョークをふりまきながら「穢れ」という考え方の愚かさを教えてくれる。

モンスターズ・インクは、モンスターたちを人間界の子どもたちの寝室に送り込み、彼らを怖がらせて悲鳴をあげさせ、その悲鳴を集めモンスター・シティのエネルギー源として供給している会社である。しかし、エネルギーはだんだんなくなってきていた。というのも、「最近の子ども」は、そう簡単に怖がらなくなってきているからだ。

この会社の悲鳴獲得ポイント№1が青と紫の毛むくじゃらのモンスター、サリバン(声:ジョン・グッドマン)である。大親友でもある一つ目のパートナー、マイク(ビリー・クリスタル)とともに、夜な夜な人間の子どもをおびえさせている。

だが、モンスターたちにとって、人間は有害であると信じられており、人間界の物は何であろうとモンスター・シティに持ち込むことは禁止されていた。ある日、不幸にも靴下が背中について戻ってきたモンスターは、汚染除去チームによってあっという間に殺菌・消毒される。この汚染除去チームの大掛かりな道具や大げさないでたちが最高のギャグに仕上がっている。

そんな町に、ある日人間の女の子、ブーが紛れ込んでしまい、大パニックになってしまう。当局に知れたら、自分たちも隔離されてしまうサリバンとマイクはブーを人間界に返そうと奮闘する。果たして、彼らは誰からも責められることなく彼女を人間界に戻すことができるのだろうか。

 

穢れという考え方が日本に伝わったのは、平安時代だそうだ。元々ヒンドゥー教の観念だった穢れが、同じくインドで生まれた仏教に流入し、日本全国へと広がった。これ以前にも身分差別は存在したが、それは賤視(下へ見下す見方)であった。穢れ観流入後の被差別民に対する差別は、不浄視(穢れ視する見方)へと変化したと言われる。

穢れの観念が、つねに陰湿な差別のシステムを支えるひとつの大きな要素となってきたことを思えば、私たちは、現在も根深く横たわるこの課題に真剣に取り組む姿勢を決して崩してはならない。

サリバンになつくブー。そんなブーにいつしか愛情を抱くサリバン。私たちの課題の答えは、そんなところにあるのかもしれない。(G)

 

2001年・米・92分・ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント

 

 

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